SSEYO KOAN PRO V2 & V2 PE "overview"


 SSEYO Koan Proには従来の音楽ソフトウェアには見られなかった、新しい概念や機能が豊富に盛り込まれています。同じ演奏を繰り返すことのない(それを望まなければ)という特徴を持つジェネレーティブ・ミュージック。そのユニークな音楽制作の方法を知るためのヒントの1つとして、ここでは簡単にその機能の一部を紹介していきます。


Voice Type
 Koan Proには基本的な6種類のボイスタイプがあります。これらのボイスタイプを使い分け、或いは組み合わせることでより複雑なアプローチによる作曲を実現しています。

Rhythmic Voice......フレーズごとの音符や休符にそれぞれ何音割り当てるかといった設定で作成されるKoan Proの基本的なボイス。

Ambient Voice......実時間(ミリ秒単位)で音の発生をコントロールするボイスタイプ。拍という概念から解放されたアプローチができる。

Follow Voice......指定したパートの音に反応して演奏されるボイス。エコーやディレイ効果、コードなどを演奏するのに適したボイス。

Repeat Bar......指定した部分をパラメーターの設定に沿って繰り返す(リピート)タイプのボイス。最も使い所が難しいボイスでもある。

Fixed Pattern......ピアノロール画面でパターンを入力するシーケンサ的なボイス。パターンを混在させたり、変化させることもできる。

Listening Voice......MIDI入力に反応して演奏されるボイス。通常このボイスに他のボイスパートを関連付けてインタラクティブに使用する。


Ambientボイスタイプの例



 この図の例では1,000ms(ミリ秒)から7,000msの間の何れかの長さで音が演奏され、3,000msから4,000msの間の何れかの長さの休符が演奏されるということを意味します。しかしこれはRhythmic Voiceパラメータの設定や後述のScaleルール、その他のルールや曲全体の設定などとも関連してくるので、これだけでは一体どのような演奏がなされるのかはわかりません。Koanにおけるパラメーターの多くは、いくつかの関連する他パラメータと密接な関係を持っています。シンプルなパラメータを組み合わせることによって、実に様々な作曲方法を可能にしているのです。


Music Rule
 Koan Proには基本となる4種類のミュージック・ルールがあります。全てのボイスはこの何れか、或いは全てのルールの影響下で演奏されることになります。

Scale Rule......12音階の各音毎の発生率を設定するルールです。12音、各種モード、メジャー、マイナーなど、自分の好きな設定にすることができます。例えばある特定の音程しか鳴らないようにしたり、複数のスケールをランダムに切り替えるなどといったアプローチも可能です。



Harmony Rule......他のボイスとの音程(ハーモニー)を設定するルールです。設定によって常に調和した響きになるようにすることもできれば、常に刺激的な不協和音を響かせることもできます。



Next Note Rule......ある音から次の音へ進むときに、どのような音程で進んでいくかを設定するルールです。半音進行を多用するのか、跳躍進行を行うのかといったことを設定します。



Rhythm Rule......全音符から16分音符まで、音の長さをどうするか設定するルールです。一定の長さなのか、全体に遅いのか速いのかといったことが設定されます。



 ルールのパラメータは一つ一つのコラムをマウスでドラッグすることで設定します。コラムが完全に塗りつぶされた状態が100%を表し、低い位置であればあるほど発生する確率が低いことを意味します。例えば上のHarmony Ruleの図の状態は、m2(短2度)が0、M2(長2度)とM7(長7度)が30%から50%位の確率、その他の音程の確率が100%であることを示しています。また、各ルールはそれぞれ他のルールや各ボイス毎のパラメータと密接な関係をもっています。


Pattern Editor
 パターン・エディターでは自分の考えたフレーズを入力することができます。これによって一般的なドラムパターンやリフのようなものをそのまま演奏させることができます。



 ただしここにもKoanならではのアプローチが用意されています。一例を挙げるならば、一定のドラムンベースのループを演奏しているかのように聞こえるけれども実は微妙にタイミングがづれていたり、フィルが入っていたりする。またはミニマリスティックに短いループを繰り返しているのだけれども、いつのまにかフレーズが変化している。更には同じ場所なのにさっきと演奏しているフレーズが全く異なる、といった様々な効果をもたせることができます。主題(テーマ)をモチーフとした作曲を行う場合や、テクノミュージックの作成等で絶大な効果を発揮するでしょう。


Envelope Tools



 Koanにおけるボリュームやパン、ベロシティなどのコントロールも極めて独創的です。Envelope Toolを使うことで従来のシーケンサでは表現できなかったような新しい発想による試みが実現します。曲全体に対して、または選択した範囲に対して直感的なパラメータ値をドローすることができます。左右を飛び回るエフェクト・サウンドや、いつのまにか聞こえてくるアンビエント・ドローンなども非常に簡単に、明快なイメージをもって設定できます。


その他
 ここまでで紹介したパラメータはまだまだKoanのごく一部のパラメータにしか過ぎません。ピッチベンドその他のMIDIコントロール機能や、全てのパラメーターに複数の値を設定できる"リスト"機能、自動コード作成機能やランダマイズ機能、更にはwavやmp3(PEのみ対応)のオーディオを用いた楽曲制作の方法にすら触れていません。
 そして何度も言うように、Koanによる作曲方法は各パラメータの相互作用によって無限に広がっていきます。Koanを理解するための最大のポイントはまず使ってみることです。あらかじめ収録されているテンプレートを聴いて、それが何故そのように演奏されているのかパラメータを調べていくことで明確な答えが得られるでしょう。さぁ、もう迷わずに、明日Koan Proを買いにいきましょう! 


Koan Pro V2.6 PE